いらっしゃいませ下町和菓子栗丸堂 和菓子をもって尊しとなす
こんにちは、似鳥航一です。
3月も半ばになり、春の足音も近づいて、ついに舞い降りた花粉の季節。
……ほんと、この時期は個人的にきついです。僕の場合、喉と鼻はそれほどでもないのですが、目がごろごろして、こすると必要以上に湧き出る涙。腫れることも多いし、まさに春風に乗ってくる憂鬱な風物詩――
なんてことを今年は言っていられない状態になりました。
COVID-19、新型コロナウイルス感染症によるWHOのパンデミック発言。そして、それに伴う世の中の変化。まさか世界的にこんなことが起きるとは。読者の皆さんも対応に大変な思いをしていることでしょう。
メディアには様々な情報が溢れています。科学的信頼性の高い冷静な意見から、嘆かわしい転売屋のニュースまで、さながら人間の多様性の表れのようですが、今のところ日本では爆発的な感染は発生しておらず、回復者数も順調に増加しています。
ワクチンが開発されれば速やかに収束に向かうのは明白。ただ、それにはどれくらい時間がかかるのか。半年か、1年か、もっと長い持久走になるのか。あるいは新しい画期的な治療法が発明されたりするのでしょうか。
何にせよ、今はできることを自分たちなりに堅実に続けるしかありません。
じつのところ小さな子供たちや僕らのようにそこそこ若い世代は、感染してもデータ上では比較的軽症の場合が多いようなのですが、(※イタリアの感染死亡者の年齢データ等参照。自分だけがよければいい系の一部の有名人がしきりに自粛は無意味だと煽るのは、その辺りの事情も影響していそう)――かといって、体力的に恵まれない方々の命を無差別に危険に晒すわけにはいかないでしょう。何とか封じ込めて、皆が安心して生活できる環境を取り戻さないと。
オーバーシュートを避けるため、今は油断大敵のタイミング。
情報の真偽を見極め、物事の明るい面を見るようにして、お互い頑張っていきましょう。
<新刊のお知らせ>
株式会社KADOKAWA・メディアワークス文庫編集部から新刊の見本誌を頂きました。
『いらっしゃいませ 下町和菓子 栗丸堂 「和」菓子をもって貴しとなす』
~Kurimarudo in Asakusa and Japanese sweets by Prince Shotoku~
――ふとしたことで旅に出た栗田と葵の行く手に、不思議な青年が現れる。
長い歳月の果てに葵と邂逅した彼は、かつて彼女と並び称された和菓子の神童だという。
栗田と葵と愉快な仲間たち――。
彼らは何を求め、何を巻き起こし、何を我々にもたらすのか?
和菓子をテーマにした新たな人情物語――3月25日(水)刊行です。
* * *
今回から新章開幕ということで、この巻から読んでも問題なく楽しめるように作ってあります。最初ということで、えっと思うような意外な場所が舞台だったり。
題材としては、
第1話では「蘇」
第2話では「わらび餅」
第3話では「栗饅頭」
などを取り上げていて、それぞれの話に今回から登場する謎の青年が独特の形で絡んできます。表紙の三人のうちの一番右側の人ですね。彼のデザイン、個人的にとても気に入っています。
描いてくれたのは、このシリーズではお馴染みのイラストレーター、わみずさん。――あなうれし、いとをかし。わみずさん、今回も素敵なイラストをありがとうございます。
●試し読み
●メディアワークス文庫のサイト
https://mwbunko.com/product/321912000286.html
●KADOKAWA公式サイト
https://www.kadokawa.co.jp/product/321912000286/
●イラストレーター・わみずさんの公式ホームページ
http://www.a-mocco.com/wamizu.html
●わみずさんのpixivアカウント
<プルシアンブルーの風景>
せっかくの更新ということで、とくに脈絡なく、浅草のスカイツリーと青空の写真を載せてみます。
空の色は清爽なプルシアンブルー、別名ヒロシゲブルー。
ヒロシゲブルーは江戸時代の浮世絵師・歌川広重が使いこなし、西洋の画家を魅了したと言われる色。当時のヨーロッパから輸入した最新の顔料・紺青(こんじょう)を効果的に用い、濃厚かつ鮮やかな発色を実現した――的なことがwikiに書いてありました。
それとは特に関係なく、最近浮世絵にちょっと興味が湧いて時々調べています。伝統表現の手法の変遷を追うのは、伝統という不可視のルールがあるだけに興味深い。
明治時代の浮世絵師・小林清親(こばやしきよちか)などは、日本が近代に移行していく過程を綺麗に浮世絵の形式に落としこんでいて、今の目で見るとかなりエモいです。
●NAVARまとめ・小林清親
https://matome.naver.jp/odai/2142520846824038801
さておき、話は少し変わって。
和菓子に「落雁」ってありますよね? お盆に仏壇によく供える干菓子の打ち物です。
この落雁、なぜ「落ちる雁」と書くのか不思議に思ったことないですか?
和菓子好きなら気になるところだと思うのですが、色々省略して結論から言うと名前の由来は諸説あって、
・中国の軟落甘(なんらくかん)という菓子が日本に伝わった際、軟が抜け落ちて「落甘(らくがん)」に転訛した。
・本体の白い部分に黒ごまの散った様子が雁が落ちていく光景に似ていたため、「堅田の落雁」になぞらえた。
この2つの説が特に有力なのだそうです。(他にもありますが今回は割愛)
さて、ここでヒロシゲブルーの歌川広重に話を戻し――。
広重といえば代表作として挙げられるのが「東海道五十三次」、「名所江戸百景」、「富士三十六景」など。そして、それらよりは若干知名度が劣るものの、名所絵「近江八景」もやっぱり有名。
この近江八景の中に「堅田の落雁」が含まれているのですね。
●堅田の落雁
近江八景のひとつ。琵琶湖の南西岸、湖上に突き出た堅田の満月寺浮御堂付近の湖上に雁の群れが舞い降りる情景を示す。(デジタル大辞泉プラスより)
具体的には以下の絵です。
●堅田落雁
どうでしょう。確かに落雁の白生地に黒ごまが散っているような光景に見える――のかな? 個人的には黒ごまが散った落雁をあまり見たことがないので、ぴんと来ないというのが正直なところ。
でもまあ絵画ではなく、実際の堅田落雁を見れば印象も違うのかもしれません。空から舞い降りる落雁は秋の季語。多くの歌人が堅田を訪れ、歌を残しているそうです。
関西にお住まいの方は、秋になったら滋賀県大津市の本堅田に出かけ、浮御堂からリアルな落雁を眺めて一句詠むのも一興かと。
●満月寺浮御堂
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%BA%80%E6%9C%88%E5%AF%BA%E6%B5%AE%E5%BE%A1%E5%A0%82
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