お越しください、稲荷寿司あやかし神社
こんにちは、似鳥航一です。
風蕭蕭として窓硝子を揺らし、ふと省みれば霜月到来――と涼しげに書き出しましたが、気づけばもう11月なんですよね。外も肌寒くなるわけだ。まだ秋の行楽イベント(兼ドラクエウォーク)も敢行していないのに……。
さておき、今月の15日に新刊が出るので、今日はその告知です。ばたばたしていて更新が遅れ、諸方面をやきもきさせてしまいました……申し訳ない。
『お越しください、稲荷寿司あやかし神社 ふっくらお揚げで思い出包みます』
~Sushi craftsman who inherits demons and foxes~
――そこは、油揚げと酢飯に取り巻かれた地上の楽園なのか?
信州の奥地、忘れられた秘境に古き神社が存在する。そこは後年、稲荷寿司の聖地と呼ばれることになるという。
今、君にその摩訶不思議なる現在進行形の伝説を語ろう。
ページをめくった際、どんな奇天烈な出来事が起きても恐るる勿れ。血が凍るような歓喜も、天に昇るような恐怖も、稲荷寿司さえあれば思うが侭なのだ。「――じゅーしぃお稲荷さん召し上がれ!」
右の皿に稲荷寿司、左の皿に海苔巻きを用意して、狐をめぐる冒険が今始まる。
身近すぎて人が普段意識しないもの――例えば水道の蛇口は、なぜどれもあのデザインなのか? 鍋は、やかんは、ホイッパーは、どうしてあの形状なのか?
そういった当たり前の諸々に着目し、仕組みを考察して理解することが物作りでは大事で――というのは僕がまだ新人ゲーム開発者だった際、ある有名開発者(と一応よいしょしておく)に聞いた言葉。
その発言はいまだに僕の物の考え方に、時折の腹部の痛みのようにしくしくと差し込んでくる。
そんな益体もない前置きはさておき。
――ごく当たり前のものとして普及している今の稲荷寿司の形には、どんな必然性があったのだろう? 技術的な経緯は? 文化的な歴史は? あのデザインの他に可能性はなかったのか?
そういった視点と疑問から生まれたものだと個人的に考えているのが、いわゆる「オープン稲荷寿司」。
油揚げの袋の上の方が開いていて、様々な具を載せられるタイプの稲荷寿司です。
……すごく美味しそう!(上はショウイチさんの直筆イラストです)
個人的にオープン稲荷寿司は現代料理の画期的発明の一つ――IT業界だと量子コンピュータ技術やブロックチェーン等に相当する――だと認識しているので、作中で思う存分取り上げてみました。
お揚げと酢飯の組み合わせ自体が美味しいですし、やり方次第で何でも好きな物をトッピングできますからね。見栄えも華やかで、ちょっとしたパーティやお弁当などに入れてもよく、更にはインスタ映えもするという、いわばオールラウンド・スシ。
自分としては、美味しく楽しい地上の楽園の一形態を描いたつもりなので、稲荷寿司、およびオープン稲荷寿司のファンの皆様におかれましては、ぜひお手に取って楽しんでもらえると幸いです。
また、今回は富士見L文庫というレーベルからの刊行で、以下が公式サイトになります。
●富士見L文庫の紹介ページ
https://lbunko.kadokawa.co.jp/product/321907000640.html
●KADOKAWAオフィシャルサイトの紹介ページ
https://www.kadokawa.co.jp/product/321907000640/
イラストレーターはショウイチさん。桜舞い散る鮮やかな表紙が心の躍動を誘ってくれます。オープン稲荷寿司のイラスト等も含め、本当にありがとうございました。
●ショウイチさんのtwitterアカウント
●ショウイチさんのpixivのページ
https://www.pixiv.net/member.php?id=12411452
また、今回は担当編集の方が頑張って色々と趣向を凝らしてくれました。
勢いのある溌剌とした方なので、僕も常々見習わなければいけないと思っています……。
上のようなクイズも。
おまけ。
茶室「光華(こうか)」。
白金台にある東京都庭園美術館の一角にある施設です。
ちょっと前に写真を撮ったのと、小説の舞台が神社の「茶屋」なので――って、それは特に関係ないのですけどね。茶室は茶屋と異なり、熱々の蕎麦もお団子も売っておらず。純粋に茶の湯のための施設です。
東京都庭園美術館は別名、旧朝香宮邸(きゅうあさかのみやてい)。
旧皇族、朝香宮鳩彦王(あさかのみや やすひこおう)が建設した邸宅で、皇籍離脱して去った後は吉田茂が居住していたとのこと。
この茶室は、その敷地の日本庭園内に作られたもので、色鮮やかな鯉が泳ぐ池の畔にひっそり佇んでいる。
紅葉の時期に合わせ、もうすぐ一般公開が始まるので載せてみました。ご興味のある方はぜひ。
●茶室「光華」(重要文化財)、秋の特別公開
https://www.teien-art-museum.ne.jp/programs/teahouse_191123.html
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