ファンレターのこと

こんにちは、似鳥航一です。

突然ですがファンレターとかけまして、リラックスできる潤沢な時間と解きます。その心は?


どちらも作家にとって宝物です――


……と、そんな書き出しから始めておいて何ですが、申し訳ありません。頂いたお手紙の返事を今月の24~25日辺りに、クリスマスプレゼントさながら届くようにしたかったのですが、ちょっと間に合わず無理でした。


お返事待ってますと書いてくださった方、ずいぶん時間が経ってしまってごめんなさい。おそらく冬休み中、少し遅めの年賀状に紛れて届くはず。こたつに入ってぬくぬくしつつ、蜜柑の皮を剥いてアルベドと呼ばれる白い部分を丁寧に取りながら、猫と一緒にのんびりお待ちください。


また、自分の住所を書かずに送ってくださった方には、手紙を出せないのでここでお返事を。これまた遅くなってしまって恐縮です。


 * * * * * *


Iさん、お手紙と桜の写真ありがとうございました。
雪のように白い花は青空によく映えます。過ぎ去ってみれば今年もあっという間で、あと数ヶ月もすればまた新しい春の桜が咲くのでしょう。


僕は改まってお花見みたいなことはあまりしないのですが、近所にお寺があり、その境内の桜が素晴らしいので、春はいつも少し遠回りして参道を経由して駅へ向かいます。
そう、僕も花では桜が一番好きです。
一瞬鮮やかに咲き、すぐに散るのが美しいですね。それが良いとか悪いとかではなく、どこか人の一生を象徴するようで。

そんな桜舞い散る境内を、願わくは花の下にて春死なむ……と西行法師の気分で僕は毎年桜の下をてくてく歩くのです。

実際に西行法師はその頃(旧暦2月15日=新暦3月31日)に亡くなっているのだそうですよ。

ただ、僕は花粉症でもあるので正直に言うと、願わくは桜の下にて春じゃない季節に死なむ、と思ってしまうのですが……我ながら我が侭な人です。


次の桜が咲くころIさんは進級し、そしてまた次の桜が咲くころには最上級生になるのですね。

今は目が回るほど忙しいようで大変でしょうけれど、何かのきっかけでそれが永遠に思える手持ち無沙汰な時間に変わるかもしれません。

それは喜ぶべきことなのか、そうではないことなのか?

全ては自分の心が決めていくことですけれど、卒業して振り返れば何もかもが桜のようだったりするのです。花吹雪と共に入学してきて、その中を再び去っていく、一瞬の閃光。

いつか必ず振り返る、その束の間の記憶の中の自分を、好ましい部分もそうでない部分も含めて、まるごと全て愛おしんであげられるような日々を過ごせることを祈っています。


え? 高校時代の僕がどんなだったかって?

……それは聞かないのがお約束ですよ……。


何はともあれ、今年も残すところあと僅か。外では自治会の見回りの方々が拍子木を打ち鳴らしています。風邪など引かないように気をつけて、良い新年をお迎えください。


それではお元気で。


似鳥航一

にとりの愉快な小部屋  -似鳥航一ブログ-

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